繁殖戦略について考える

【メスのしたたかな戦略、メスの側からの性選択】

A:排卵期のサインを出してオスに妊娠可能アピールをするメス(例:サルがお尻を赤くする)
B:排卵期になってもサインを出さずオスには妊娠可能期間が読めないメス(例:人間)

今まではAが妊娠に有利であると思われてきたが、Bにも相当なメリットと合理性があることが分かってきた。

なぜなら、オスを惹きつけない非排卵期の方が圧倒的に長いからだ(排卵日は月に1日しかないのに妊娠不可能な期間は約27日もある)。この間に妊娠できればいいが、そうでないとまた1か月はまったくオスに相手にされないままの不利な期間が続く。メス同士にもオスを取り合う争いがあるとすれば、これは排卵日にすべてを賭けるリスキーな戦略だ。

これを克服しようと思えば、いつ妊娠するかオスに読ませないことにより、常時妊娠可能なのではないかと演出することだ(Bの戦略)。Bはオスから見れば確率はそれほどでもないが、常時妊娠可能性を持つので常時トライする価値がある、ということになる。


ここで妊娠可能サインを出す戦略のメスと、出さない戦略のメスを比較してみる。

サインを出すメスは1日限りは圧倒的に有利に見える。

しかし、オスは殺到するが結局相手できる数、相手は非常に限られている。普通はケンカに勝つ一番強いオス1匹しか相手できない。メスが好きな相手を選び放題という単純なものではない。

一方、その間にもサインを出さない戦略のメスもそれなりにオスを惹きつける。このメスは確率はあまり高くないが常時妊娠する可能性があるようにオスからは見えるからだ。

サインを出さない戦略だと、ケンカに勝つ1番強いオスを1番乗りで手に入れられるわけではないがチャンスは毎日いくらでもある。一番強いオスからすれば、サインを出すメスと交尾した後、サインを出さない戦略のメスと交尾すればいいだけだからだ。

さらにサインを出さない戦略の強みは、あぶれる圧倒的多数のオスを相手しやすいことにある。つまり、あぶれる圧倒的多数のオスを相手してから一番強いオスと交尾すればいいだけだからだ。

結局、サインを出さないメスにはそれだけ幅広く精子を受け入れるチャンスがあると言える。

普通に考えたらあぶれる弱いオスの精子を受け入れるメリットがあるのか? となるが最近の研究ではこれもメリットがあるようだ。

今までメスは一方的に受身な存在だと考えられてきたが、乱交の生物学という本では、様々なオスの精子を受け入れても、メスが好みの精子を優遇して受精させやすくする機能があるという。つまりメスにも選択権がある、らしい。

多数のオスのミックス精子を受け入れたとしても、50%は好みの相手の精子で受精するらしい。本当ならかなりの高打率である。

各メスの遺伝子は違い、もちろん必要な相手遺伝子も違う。単純に一番ケンカの強いオスの精子がすべての面で有利であるとは限らない(有利である可能性は高いが)、だから相性(必要な遺伝子)を優先した方がいい場合も多い。

多数のオスの精子を天秤にかけられるなら、もちろんかけた方がメスにとっては有利だ。普通だとケンカに勝つオスの精子以外は選択可能性すらなくなってしまうが、妊娠可能サインを出さず、多数のオスと交われば交わるほど、メス有利な選択肢が増えるのだ。

オスは普通、相手を独占しようとするものだが、サインを出さない戦略のメスは毎日24時間、他のオスと浮気できるので、強いオスでも到底独占しきれない。一方、サインを出すメスの独占は1日だけでいいので比較的簡単であるが、それができるのはケンカで勝った1匹のオスだけである。

多数の弱者オスから見ても、ケンカで勝つオス1匹に独占されては堪らないので、こういう乱交型のメスは都合がいい。ここでなるべくチャンスの欲しい多数のオスと、多数の種が欲しいメスの利害が一致するのである。