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いつの間にか「高い城の男」ドラマ版がシーズン2に

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雰囲気いいよ! 敗戦前の繁栄を懐かしむアメリカ。鍵十字と旭日旗ヒトラーの巨大な広告が掲げられるニューヨーク、サンフランシスコらしき街。そして易経

まさにディックらしい悪夢的世界。映像でぜひディックに見せたかったな。

 

ディックの核心的テーマは「本物とまがい物」であるが、本物さえ嘘くさい、都合のいい本物などどこにもないのがディックである。

 

だから「高い城の男」で出てくる「本物の歴史、虚構の歴史」という対立もどちらか一方が正しい本物で解決といったものではなく、どちらも嘘くささが付きまとう。

 

そういう嘘くささばかりで本物が見えない世界で、ディックの選ぶものは本物でもまがい物でもない。彼が選ぶのは、今この瞬間自分たちが造りだす全く新しい何かであり、起源や正当性など全く必要ない意志の力である。

 

主人公は過去の「本物」の工芸品を売ることをやめる、また偽物作りも同時にやめる。そうして勇気と意志によって本物でも偽物でもない新しい工芸品を造る。

 

歴史についても同じである。主人公たちは「本物の歴史」も「虚構の歴史」も選ばない。アメリカが勝った世界でも負けた世界でも関係ない。大事なのは与えられた環境から自らの意思で生み出す新しい未来である。そういった意味で正当性からの決別、本物からの決別の勇気が素晴らしい。

 

さらにこの物語は作中だけでは完結しない。あのラストが意味するところは、我々の住むこのリアルな現実(アメリカが勝った世界)というものもまた疑わしく、インチキくさい残酷な世界であると暗示している。

 

つまり、フィクションが現実を侵食していくという、このメタフィクション性がいかにもディックらしい衝撃を生んでいるのである。未読の人はぜひ原作も読んでほしい。

 

まあ、それはさておきドラマ版の最初の1時間ぐらいを見たが、出来は結構良かった。

原作では本だった「イナゴの日」が、フィルムになっていて史実の米軍が勝利する場面だったのは上手い映像化だなと思った。

 

それにしてもアマゾンのドラマ制作スタイルの進化はすさまじいね。今回はジャンルの違う13作品のパイロット版(90秒程度の予告編)が作られ、その中から投票で優秀作がTVシリーズ化決定とされたそうだ。

 

マンガ誌が読み切りの人気投票で掲載を決めるのに似ているが、確かにこれなら無駄に売れない作品を作って爆死ってリスクはだいぶ軽減されるし、パイロット版なら多数作っても安くつく、さらにパイロット版がすでに広告の役割を果たし効率がいい。

ネットの強みを生かしたうまいやり方だなと思う。