誰がインチキ魔術師なのか。

世界の奇書をゆっくり解説 第7回 「軟膏をぬぐうスポンジ」ほか by Alt + F4 歴史/動画 - ニコニコ動画

理性や論理とは何か、因果関係と相関関係の違い、知の断層について考えさせられる論争だ。

 

これは武器によって負った傷は、武器に軟膏を塗ると治りが早くなるという15世紀の医療について、賛成派と反対派の間で交わされた論争である。現代から見るとあり得ない迷信であるが、当時としては十分に理性的で論理的な医療であって、わざわざ対照実験までして効果が確認されたものであるという。

 

以下、分かりやすく賛成派と反対派の論理を抜き出してみよう。

賛成派

・目に見えないが空間を離れて作用する力は自然界に多数存在する。磁力などがそうである。

・武器軟膏は目に見えない「共感の力」によって作用する。武器に付着した血液を治療することによって傷口の治癒も早まるという原理である。銃の場合に効果がないのは、銃には血液が付いていないのだから当然である。

・この「共感の力」は魔術的なものではない。人体と天体に相互作用があるのと同じような自然で自明なものである(当時、人体と天体に相互作用があるというのは常識だった)。

・負傷した兵士を無作為に2つのグループに分け、一方には武器軟膏治療をし、もう一方には通常治療をしたところ、武器軟膏治療のグループの方が傷の治りが早かった。

・英国王ジェイムズ1世に認められた俺にケンカを売る気か!?

 

反対派

・神の法に反していて悪魔的、魔術的である。

・直接的、仮想的接触なしの影響はあり得ない。

・魔女が人形を突き刺せば人が苦しむといったような迷信にすぎない。

・銃に武器軟膏を行っても効果がないのは矛盾である。

・お前、インチキ魔術師やろ!

 

この問題がややこしいのはもちろん、因果関係と相関関係の違いがややこしいことにある。先ほどの対照実験にしても、通常の傷薬というのはワニの糞とか蝮の油といった不衛生なものであった。一方、武器軟膏の方は傷に余計な手出しをしなかった分、まだマシであった。さらに言えば武器軟膏はよく効く医療法ということで兵士たちも安心感がありストレスが少なかっただろう。ある意味、武器軟膏の方が効くのは当たり前であった。

 

現代人はこうしたものを迷信と笑うけれど、現代でも様々な迷信、因果関係と相関関係の混乱は存在する。きっと100年後の人々は我々の迷信を笑っていることだろう。